「もう離婚したい。でも、何から準備すればいいの?」
離婚を決意したとしても、すぐに離婚届を出すのはおすすめできません。
特に子どもがいる場合、離婚後の生活費、住む場所、仕事、親権、養育費、財産分与など、考えておかなければならないことがたくさんあります。
離婚後になってから「もっと調べておけばよかった」「必要な書類を保存しておけばよかった」と後悔しないためにも、できることから準備しておきましょう。
この記事では、離婚前に準備しておきたいことを10項目に分けて解説します。
この記事のポイント
- 離婚前に確認しておきたいお金・財産
- 子どもがいる場合に決めておきたいこと
- 離婚後の生活に必要な準備
- 証拠や重要書類の保存
- 2026年4月から変わった離婚後のルール
1.まず「離婚後の生活費」を計算する
離婚前に最初に考えておきたいのが、離婚後のお金です。
離婚すると、これまで夫婦で負担していた家賃や住宅ローン、光熱費、食費などを、自分の収入や公的な支援などでまかなう必要が出てきます。
特に子どもがいる場合は、
- 家賃
- 食費
- 水道光熱費
- 通信費
- 保育料・学費
- 学用品
- 医療費
- 交通費
- 保険料
- 車にかかる費用
- その他の生活費
などを一度書き出してみましょう。
そして、
「毎月いくらあれば生活できるのか」
を把握しておくことが大切です。
離婚後の収入についても、
- 自分の給料
- 養育費
- 児童扶養手当などの公的支援
- 児童手当
- その他の収入
などを確認しておきましょう。
ただし、手当や助成制度には所得制限や自治体ごとの違いがあるものもあります。
「もらえるはず」と決めつけず、住んでいる自治体の最新情報を確認することが大切です。
2.夫婦の財産を確認しておく
離婚前には、夫婦がどのような財産を持っているのかをできるだけ把握しておきましょう。
財産分与とは、夫婦が婚姻中に協力して取得した財産を、離婚する際などに分けることです。
裁判所も、財産分与について「婚姻中に協力して取得した財産を離婚時または離婚後に分けるもの」と説明しています。
確認しておきたいものには、例えば次のようなものがあります。
- 預貯金
- 給与・賞与
- 株式や投資信託などの有価証券
- 不動産
- 自動車
- 生命保険などの保険
- 退職金
- 住宅ローンなどの負債
夫婦の財産がどこにあるのか分からない場合は、分かる範囲で情報を整理しておきましょう。
通帳のコピーや残高が分かる資料、不動産関係の書類なども、必要に応じて保存しておくと安心です。
財産分与の期限にも注意
2026年4月1日以降に離婚した場合、財産分与について家庭裁判所に調停・審判を申し立てられる期間は、原則として離婚した日の翌日から5年以内となっています。
2026年3月31日以前に離婚した場合は、従来どおり2年以内です。
3.自分名義の銀行口座を用意する
離婚後の生活を考えるなら、自分名義の銀行口座を準備しておくことも重要です。
給与の振込先や、各種給付金などの受取口座として使えるようにしておきましょう。
すでに自分名義の口座がある場合でも、現在の状況を確認しておくと安心です。
また、離婚後に必要になる可能性がある費用を少しずつ確保しておくことも大切です。
ただし、夫婦共有財産については、財産分与の対象となる可能性があります。
「離婚するから相手に分からないように財産を隠す」という行動ではなく、夫婦の財産を正確に把握して、正しく整理することを意識しましょう。
4.仕事・住む場所を考えておく
離婚後にどこで暮らすのかも、離婚届を出す前に考えておきたいポイントです。
例えば、
- 今の家に住み続ける
- 実家に戻る
- 賃貸住宅へ引っ越す
- 公営住宅などを検討する
などがあります。
子どもがいる場合は、
- 保育園・幼稚園
- 学校
- 通学時間
- 学童保育
- 子どもの友達関係
- 通院先
- 自分の職場までの距離
なども考えておきましょう。
また、専業主婦や現在の収入が少ない場合は、離婚後の仕事についても早めに調べておくと安心です。
「離婚してから仕事を探せばいい」と考えるのではなく、可能であれば離婚前から求人や勤務条件などを確認しておきましょう。
5.子どもの親権・生活について考える
未成年の子どもがいる場合、離婚後の親権について考える必要があります。
2026年4月1日から、離婚後の親権については、父母双方が親権者となる「共同親権」も選択できる制度になりました。
一方だけを親権者とする「単独親権」も引き続き選択できます。
どちらが原則ということではなく、子どもの利益を考えて判断することが重要です。
親権だけではなく、
- 子どもがどこで暮らすのか
- 日常の世話を誰がするのか
- 学校などの手続き
- 医療についての対応
- 親子交流をどうするのか
- 子どもの生活費をどう負担するのか
などについても考えておきましょう。
政府広報でも、離婚・別居前に子どもの生活や親子交流、養育費などについて取り決め、文書に残すことが望ましいとされています。
6.養育費について話し合う
子どもがいる場合、養育費についても離婚前に話し合っておきましょう。
養育費については、
- 月額いくらにするのか
- いつまで支払うのか
- 毎月何日に支払うのか
- どの口座に振り込むのか
- 入学金などの特別な費用をどう負担するのか
など、具体的に決めておくことが重要です。
裁判所も、養育費について父母双方が子どもの経済力に応じて分担するものと説明しています。
2026年4月から「法定養育費」が始まりました
2026年4月1日以降に離婚した場合、養育費の取り決めをしていない場合でも、一定の条件を満たせば、子どもを主として監護している親から相手に対して、子ども1人につき月額2万円の法定養育費を請求できる制度が始まりました。
これはあくまで、正式な養育費の取り決めができるまでの暫定的・補充的な制度です。
「離婚時に養育費を決めなくても月2万円もらえるから大丈夫」という意味ではありません。
子どもの生活を安定させるためにも、父母の収入などを踏まえて適切な養育費を話し合っておくことが大切です。
7.養育費などの取り決めは書面に残す
離婚後に「言った・言わない」のトラブルにならないよう、重要な取り決めは口約束だけで終わらせないようにしましょう。
例えば、
- 養育費
- 財産分与
- 慰謝料
- 親子交流
- 子どもの生活に関する取り決め
などです。
法務省も、養育費については金額、支払期間、支払時期、振込先などを具体的に決め、書面に残すことを案内しています。
さらに、一定の条件を満たす公正証書(執行証書)にしておくと、養育費が支払われなかった場合に強制執行の手続きを利用しやすくなる場合があります。
ただし、公正証書を作れば必ず支払われるという意味ではありません。
8.年金分割について確認する
夫婦の一方が会社員などで厚生年金に加入していた場合、離婚時の「年金分割」を利用できる可能性があります。
年金分割は、婚姻期間中の厚生年金の記録を一定のルールに基づいて分割する制度です。
対象になるのは、基本的に婚姻期間中の厚生年金記録であり、国民年金の老齢基礎年金そのものを分ける制度ではありません。
2026年4月から請求期限が変わっています
2026年4月1日以降に離婚した場合、年金分割の請求期限は原則として離婚した日の翌日から5年以内です。
2026年3月31日以前に離婚した場合は、原則として2年以内です。
離婚前でも、日本年金機構に「年金分割のための情報提供」を請求することができます。
離婚後の生活設計を考えるためにも、対象になりそうな場合は早めに確認しておきましょう。
9.離婚原因に関する証拠を保存する
離婚の原因によっては、証拠を残しておくことも重要です。
例えば、
- 暴言・脅迫などの記録
- LINEやメール
- 写真
- 通話履歴
- 日記やメモ
- 医療機関の診断書
- 警察や相談機関への相談記録
- 不貞行為に関する資料
- お金の使い込みなどが分かる資料
などです。
ただし、証拠の集め方によっては法律上の問題が生じる可能性もあります。
無理に相手のスマートフォンを盗み見るなどせず、自分が正当に取得できる資料を保存することを基本にしましょう。
また、DVや暴力などがある場合は、「相手と話し合ってから離婚する」ことにこだわる必要はありません。
安全を最優先にして、専門機関や弁護士などに相談しましょう。
10.重要書類をコピー・保存しておく
離婚前に、必要な書類を確認しておくと後の手続きがスムーズになります。
例えば、
- 戸籍関係の書類
- マイナンバー関係の書類
- 健康保険関係の書類
- 年金関係の書類
- 給与明細
- 源泉徴収票
- 預貯金関係の資料
- 保険証券
- 不動産関係の書類
- 住宅ローン関係の書類
- 子どもの学校・保育園関係の書類
などです。
特に、相手が管理していて自分では内容を確認できない財産については、離婚前にできる範囲で情報を整理しておくとよいでしょう。
離婚前にやることチェックリスト
最後に、離婚前に確認しておきたいことをまとめます。
- 離婚後の生活費を計算する
- 自分の収入と離婚後の収入を確認する
- 夫婦の預貯金を確認する
- 不動産・車・保険などの財産を確認する
- 借金や住宅ローンなどの負債を確認する
- 自分名義の銀行口座を確認する
- 離婚後に住む場所を考える
- 離婚後の仕事について考える
- 子どもの生活について考える
- 親権について考える
- 養育費について話し合う
- 親子交流について考える
- 取り決めを書面に残す
- 年金分割について確認する
- 財産分与について確認する
- 離婚原因に関する証拠を保存する
- 重要書類を保存する
- 必要に応じて弁護士などの専門家に相談する
離婚届を出す前に「生活できる状態」を作っておこう
離婚を決意すると、一日でも早く離婚したいと思ってしまうことがあります。
でも、離婚届を出す前に少し立ち止まって、
「離婚した翌日から、私は子どもとどう生活する?」
と考えてみてください。
住む場所はある?
仕事や収入は大丈夫?
生活費はいくら必要?
子どもの学校はどうする?
養育費はどうする?
財産はきちんと確認した?
必要な書類は手元にある?
こうしたことを一つずつ整理しておくことで、離婚後の不安を少し減らすことができます。
離婚は「離婚届を提出したら終わり」ではありません。
むしろ、離婚後の生活をどう安定させるかが大切です。
特に子どもがいる場合は、離婚そのものだけではなく、子どもと自分が安心して暮らしていける環境を準備することを優先しましょう。
ひとりで全部決めなくても大丈夫
離婚に関する問題は、夫婦だけの話し合いで解決できるとは限りません。
話し合いがまとまらない場合や、相手と話し合うこと自体が難しい場合には、家庭裁判所の調停を利用する方法があります。
家庭裁判所の夫婦関係調整調停(離婚)では、離婚そのものだけでなく、親権、親子交流、養育費、財産分与、年金分割、慰謝料などについても話し合うことができます。
また、DVや暴力、脅迫などがある場合は、安全を最優先にして、無理に相手と話し合わないようにしましょう。
「自分だけで何とかしなければ」と思わず、必要に応じて弁護士などの専門家や公的な相談窓口を利用してください。
まとめ
離婚を考えたら、離婚届を書く前に準備しておきたいことがたくさんあります。
特に重要なのは、
「お金」「住む場所」「仕事」「子ども」「財産」「養育費」「証拠」「必要書類」
です。
そして2026年4月からは、離婚後の親権について共同親権を選択できるようになったほか、養育費の「法定養育費」制度も始まりました。離婚を考えている場合は、以前の情報だけで判断せず、現在の制度を確認することが大切です。
離婚を急ぐのではなく、離婚した後に子どもと安心して生活できる準備をしてから、一つずつ手続きを進めていきましょう。
参考・参照元
- 裁判所「夫婦関係調整調停(離婚)」
- 裁判所「財産分与請求調停」
- 裁判所「養育費請求調停」
- 裁判所「離婚後の親権者の定めに関する手続等」
- 日本年金機構「離婚時の厚生年金の分割」
- 日本年金機構「離婚時の年金分割の請求期限が改正されました」
- 政府広報オンライン「離婚後も『共同親権』が選択可能に。改正された子育てに関するルール」
- 法務省「離婚を考えている方へ」
※この記事は一般的な制度の説明を目的としたもので、個別の法律問題についての法的助言ではありません。離婚条件や財産、DVなど個別事情がある場合は、弁護士などの専門家への相談をおすすめします。

