「離婚するときに養育費を決めたのに、払ってくれない」
「最初は払ってくれていたけれど、突然振り込まれなくなった」
「元夫に連絡しても無視されてしまう」
養育費が支払われなくなると、子どもの生活費や教育費にも影響するため、とても不安になりますよね。
でも、「払ってくれないから、もう諦めるしかない」というわけではありません。
養育費について取り決めをしている場合は、取り決めの方法によって、家庭裁判所への履行勧告や、給与・預貯金などの差押えといった手続きを利用できる場合があります。
この記事では、養育費が払われないときに、シングルマザーが確認したいことや具体的な対処法をわかりやすく解説します。
まず確認したいのは「養育費をどうやって決めたか」
養育費が支払われないとき、最初に確認したいのが、養育費についてどのような取り決めをしているかです。
たとえば、
- 口約束だけ
- 父母の間で書面を作った
- 公正証書を作った
- 家庭裁判所の調停で決めた
- 家庭裁判所の審判で決めた
- 離婚裁判の判決で決まった
などがあります。
この違いによって、未払いになったときに利用できる手続きが変わります。
特に、公正証書や家庭裁判所の調停調書・審判書などがある場合は、強制執行によって給与や預貯金などを差し押さえて回収できる可能性があります。
養育費が払われないときの対処法5つ
① まずは支払いを求める
まだ一度も催促していない場合は、まず相手に支払いを求めます。
電話で話すことが難しい場合は、メールやLINEなど、記録が残る方法で連絡するのも一つの方法です。
たとえば、
「○月分の養育費がまだ振り込まれていません。○月○日までに、○円を指定口座へ振り込んでください。」
というように、
- 何月分なのか
- 未払い金額はいくらなのか
- いつまでに支払ってほしいのか
を具体的に伝えます。
感情的なやり取りになると話が進みにくくなるため、できるだけ事実を簡潔に伝えることをおすすめします。
また、LINEやメールなどのやり取りは、後から確認できるよう保存しておきましょう。
② 未払いの記録を残しておく
養育費が払われない場合は、**「いつ、いくら払われていないのか」**を記録しておくことが大切です。
たとえば、
| 支払月 | 支払う予定額 | 実際の入金額 | 未払い額 |
|---|---|---|---|
| 4月 | 50,000円 | 0円 | 50,000円 |
| 5月 | 50,000円 | 20,000円 | 30,000円 |
| 6月 | 50,000円 | 0円 | 50,000円 |
というように一覧にしておくと、未払いの状況が分かりやすくなります。
銀行口座の入出金履歴や、相手とのメール・LINEなども保存しておきましょう。
③ 家庭裁判所の「履行勧告」を利用する
養育費が家庭裁判所の調停・審判・人事訴訟などで決まっているのに支払われない場合は、履行勧告を利用できます。
履行勧告とは、家庭裁判所が相手に対して、決められた内容を守るように促す制度です。
申出は、養育費の取り決めをした家庭裁判所に対して行います。
書面だけでなく、口頭や電話でも申し出ることができ、手続きに費用はかかりません。
ただし、履行勧告には注意点があります。
履行勧告には強制力がありません。
相手が勧告に応じなかったとしても、履行勧告だけで強制的に支払わせることはできません。
そのため、相手が支払わない場合には、次の段階として強制執行などを検討することになります。
なお、履行勧告は家庭裁判所の調停・審判・人事訴訟などで決められた事項が対象で、公正証書などによる合意については履行勧告を利用できません。
④ 給料や預貯金を「差し押さえる」
養育費を取り決めたにもかかわらず支払われない場合、条件を満たせば、相手の財産を差し押さえて回収することができます。
対象になるものとしては、
- 給料
- 預貯金
- その他の財産
などがあります。
裁判所によると、調停調書や公正証書などで取り決めた養育費について、給与や銀行預金などを差し押さえて回収する手続きがあります。
さらに養育費については、通常の金銭債権とは異なる特則があり、すでに支払期限が過ぎた未払い分だけでなく、将来分についても、一定の条件のもとで給与などの継続的な収入を差し押さえる申立てができます。
ただし、預貯金の差押えについては、基本的に未払い分が対象となるなど、差押えの対象によって扱いが異なります。
⑤ 相手の財産が分からない場合は「財産開示」などを検討する
「元夫がどこで働いているのか分からない」
「どの銀行に預金があるのか分からない」
という場合でも、一定の条件を満たせば、財産開示などの手続きを利用できる場合があります。
裁判所には、養育費などの支払いを受けるためのワンストップ執行手続が設けられており、財産情報を取得する手続きと差押えを組み合わせて利用できる仕組みがあります。
相手の勤務先や財産が分からないからといって、すぐに諦める必要はありません。
2026年4月から「法定養育費」が始まりました
ここは、これから養育費について調べるシングルマザーにとって、とても重要なポイントです。
2026年4月1日から、法定養育費の制度が始まりました。
2026年4月1日以降に離婚し、父母の間で養育費の取り決めをしていない場合、離婚時から引き続き子どもを主として監護している父または母は、養育費を決めるまでの暫定的・補充的なものとして、子ども1人につき月額2万円の法定養育費を請求できます。
たとえば子どもが2人なら、
2万円 × 2人 = 月4万円
が法定養育費の額になります。
ただし、これは「養育費は誰でも月2万円でいい」という意味ではありません。
法定養育費はあくまで暫定的・補充的な制度で、父母それぞれの収入などを踏まえた適正な養育費を、話し合いや家庭裁判所の手続きによって決めることが重要です。
また、2026年4月1日より前に離婚した場合には、法定養育費は発生しません。
法定養育費も払われない場合は?
2026年4月1日以降に離婚し、一定の条件を満たす場合には、法定養育費についても差押えの手続きを利用できる制度があります。
裁判所によると、法定養育費は、
- 2026年4月1日以降に離婚している
- 離婚当時に未成年の子どもがいる
- 離婚後も引き続き子どもの監護を主として行っている
などの条件を満たす場合に対象となります。
法定養育費については、子ども1人につき月2万円です。
一方、2026年4月1日以降に発生した取り決め済みの養育費については、一定額について先取特権を利用した差押えの仕組みも設けられています。先取特権が付与される額は、月額8万円×子どもの数が上限です。
ここは制度が複雑なので、実際に申し立てる場合は、現在の離婚日や養育費の取り決め方法、未払い期間などを整理したうえで、裁判所に確認するのがおすすめです。
「口約束しかない」場合はどうする?
養育費について口約束しかしていない場合は、強制執行をすぐに利用できるとは限りません。
法務省も、養育費については口約束ではなく、金額・支払期間・支払時期・振込先などを具体的に決め、書面に残すことを案内しています。
すでに離婚していて養育費の取り決めがない場合でも、家庭裁判所に養育費請求調停を申し立てることができます。
調停で話し合いがまとまらなければ、審判手続に移り、裁判官が判断することになります。
公正証書がある場合はどうする?
養育費について、一定の条件を満たす公正証書を作成している場合、その公正証書は強制執行をするための「債務名義」となることがあります。
その場合、相手が養育費を支払わなければ、給与や預貯金などの差押えを申し立てることができます。
ただし、公正証書だから必ずそのまま差押えができるというわけではなく、強制執行認諾文言など、必要な条件を満たしているか確認することが重要です。
養育費が払われないときにやってはいけないこと
養育費が払われないと、怒りや不安から相手を責めたくなることもあります。
でも、次のような行動は避けたほうがいいでしょう。
SNSで相手の個人情報を公開する
「養育費を払わない元夫」として、名前や勤務先などをSNSに公開するのはおすすめできません。
問題がさらに大きくなる可能性があります。
子どもを通じて催促する
養育費の問題は大人同士の問題です。
子どもに「パパにお金を払ってって言って」と頼むのではなく、大人同士で対応しましょう。
面会交流と養育費を一方的に交換条件にする
養育費と親子交流は、それぞれ子どもの利益を考えて取り扱うべき問題です。
養育費が払われないことに困っていても、感情だけで面会交流を決めるのではなく、必要に応じて家庭裁判所などに相談しましょう。
養育費が払われないときの流れ
状況によって異なりますが、基本的には次のように考えると分かりやすいです。
① 未払い額を確認する
↓
② 相手に支払いを求める
↓
③ 証拠・記録を整理する
↓
④ 取り決め方法を確認する
↓
⑤ 家庭裁判所の履行勧告などを検討する
↓
⑥ 必要に応じて強制執行・差押えを検討する
ただし、口約束しかない場合などは、まず養育費の取り決めをするための調停などを検討する必要があります。
まとめ|養育費を払ってもらえないからといって、諦めなくて大丈夫
養育費が突然払われなくなると、
「もう何をしても無理なのかな」
「裁判なんて大変そう」
と不安になってしまいますよね。
でも、養育費には、未払いになったときに利用できるさまざまな制度があります。
家庭裁判所で決めた養育費なら履行勧告を利用できる場合がありますし、調停調書や一定の条件を満たす公正証書などがあれば、給与や預貯金などの差押えによって回収を目指すこともできます。
また、2026年4月1日からは法定養育費の制度も始まりました。
大切なのは、「払ってくれないから仕方ない」と一人で抱え込まないこと。
まずは、
- 養育費をどうやって決めたのか
- 何か月分が未払いなのか
- 取り決めを書いた書類があるか
- 相手の住所や勤務先が分かるか
を整理してみましょう。
そのうえで、家庭裁判所や弁護士などの専門機関に相談すると、今の状況で利用できる手続きを確認しやすくなります。
子どもの生活を守るためのお金だからこそ、受け取ることを遠慮する必要はありません。
一人で悩まず、利用できる制度を知ることから始めてみましょう。
この記事の参照元・公式情報
この記事では、制度について以下の公的機関の情報を参照しています。
- 法務省「離婚を考えている方へ」
- 法務省「りこんポータル」
- 法務省「民法等の一部を改正する法律(父母の離婚後等の子の養育に関する見直し)について」
- 裁判所「養育費に基づく差押え」
- 裁判所「履行勧告手続」
- 裁判所「養育費請求調停」
- 裁判所「養育費等のワンストップ執行手続」
※この記事は一般的な情報をまとめたもので、個別の法律相談ではありません。離婚した時期、養育費の取り決め方、未払いの期間などによって利用できる手続きが異なります。実際に手続きを行う場合は、最新の裁判所・法務省の案内を確認してください。


